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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

――聞説。

宋朝ノ管領、梁中書、北京ニアリテ、民ヲ毒シ、権ヲ用イ政ヲ恣シテ富財ヲ私スルコト多年。然ノミナラズ、夫人蔡氏ノ岳父、蔡大臣ノ都ノ邸ヘ向ッテ、連年、生辰綱(誕生祝いの金品)ヲ贈ルコト実ニ巨額ニノボル。

茲ニ、今年七月十五日ノ生辰ヲ期シ、又モ十万貫ノ不義ノ財貨ヲ密カニ都門東京ヘ輸送セントス。天冥、豈コノ不義ヲ許スベケンヤ。

即チ、ワレ等六名、天ニ代ッテ、懲罰ヲ下シ、以テ侫吏ノ肝胆ニ一颯ノ腥風ヲ与エントスル者ナリ。モシ盟ヲ破リ、異端ヲ抱ク者アラバ、ソレ天ノ冥罰ヲ受クルモ恨ミナキコトヲ天地ニ誓ウ。――神明、照覧アラセ給エ。

「……いざ、ご順に」

おのおの、紙の銭を焚き、代る代る礼拝する。

「さあ、これで誓いはすんだ」

お供え物を下げて、一同また、客間で飲み直していた。

すると何となく、物騒がしい声が門外の方で聞え出した。はてと、晁蓋が耳をすましていると、そこへ家人のひとりが来て、さも持て余し気味に訴えた。

「旦那、旦那。ご酒宴中、なんとも相すみませんが、ちょっと、おいでなすって」

「うるせえな、お客さまの席へ。いったい、なにをがやがや騒いでいるんだ」

「それがその……なんとも手のつけられねえ強情ッ張りな山伏なんでして」