轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

たちまち、一ト桶の焼酎は底になってしまった。

「ああ、こたえられねえ。こんな山路で思いがけなくぶつかッたせいか、甘露とも何とも言いようがねえな。暑さもすッかり忘れたぜ」

「やいやい。機嫌ばかりよくしやがって、焼酎の値段もまだ訊いていねえじゃねえか。酒屋さん、一ト桶干したよ、いくらだい」

「一荷十貫さ。片桶だから五貫だよ」

「よしきた。そら五貫文」

一人が銭を渡していると、べつの一人が、

「――もう一ト椀、負けときな」

と、片荷の桶の蓋を取って、すばやく中へ椀を突っ込み、一ト口がぶと飲みかけた。ひょいと、振り向いた酒売りは、

「あっ、いけねえッたら!」

まだ半分残っている椀の酒を、いきなり、引ッたくろうとする。ところが、椀を持った小商人は、くるッと、巧く身を外し、そのまま松林のうちへ逃げこんで行った。それをまた、酒売り男も、片意地らしく、

「畜生ッ」

とばかり、追っかけていったものである。すると、後に残っていた連中はまた、その隙をいいことにして、これまた、も一つの椰子椀で、明き巣の桶にたかりだした。ふと、振り向いた酒売りは、さらに仰天した姿で、

「泥棒っ」

馳け戻るやいな、遮二無二に、椀を奪りあげた。