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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

まるで、値段未定の半罪人の札を貼りつけたようなものである。

「オオ痛え。永年、甘い汁を吸っていた報いか知らねえが、こうなると、奉行所勤めも辛いもンだな」

額の血を抑えながら、何濤は刑事頭の一室へ下がってきた。ふと見ると、黄昏れかけた向う側の目明し溜りでは、連日の奔走で、草臥れてはいるのだろうが、わいわいと馬鹿話に笑いどよめいている。何濤は、むかっとして、そこの扉口から呶鳴りつけた。

「やい、てめえたちはみんな本職を罷めて隠居の身分にでもなったのか」

「オヤ、室長。お顔をどうなすったんですえ?」

「見やがれ、おれの面体を」

「あっ、たいへんだ」

「他人事みていにいうない。いいか、十日以内に、黄泥岡の一件のかたをつけなけりゃあ、おれは遠島と言い渡されたんだ。なんでえ、てめえたちの暢気さは」

「へい、申しわけございません。といったって、こち徒も、足を棒にして、そこらじゅうを、クルクル嗅ぎ歩いちゃいるんですが」

「それでゲラゲラ笑っていられるのか。べら棒め、真剣真味に苦労してるなら、草の根を分けても、野の末、山の隅々まで、狩り立ててみろ、常日ごろにゃ、やれ飲ませてくれの、家に病人があるから助けてくれのと、そんな時ばかり、人に男泣きを見せやがってよ」