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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

あり老幼もあり、つい濡るる袂に引かれて手間どっていた。

さてまた。――一方の宋江は、馬をとばして、町へ帰っていたが、役署の厩へ、馬をつなぐやいな、すぐ往来を廻って、以前の茶店の前へやってきた。

見ると。

何濤はもう待ちあぐねたような顔つきで、そこの軒先に佇んでいる。

「やあ、お待たせいたした。……折悪しく、ちょうど宅に来客がありましてな」

「ああやっとお見えか。どうなされたかと思っていました」

「すまん、すまん。さっそく、知事閣下の室へご案内いたしましょう。どうぞ、こちらへ」

折ふし、庁の知事室では、知事の時文彬が他念なく時務の書類に目を通していた。――宋江は、静かに扉を訪れて、

「これへ連れてまいったのは、済州の刑事頭で何濤と申す者です。重大な事件で、隣県の公文を帯びて、急派されてまいりました由。――一応、公文をお披閲ねがいとう存じまする」

「どれ……」

と、文彬は花梨の大机から向き直って、正式に、何濤の手から公文を受領し、即座にそれを披いてみた。

「むむ。……何濤とやら、これはたいへんなお役目、ご苦労だな」

「よろしく、お力添えのほどを」

「もちろんだ。書中によれば、蔡大臣からの目付まで下向して、済州奉行所に泊りこみ、十日以内に、犯人のこらず縛め捕れとの厳達とか。