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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「それが、なぜいけないので」

「いや、そのことではない。――さらに話がすすんで、断頭溝の奇策やら、何濤を押ッ放してやったこと、公孫勝や三兄弟の豪傑ぶりなどを披露におよぶと、王倫の顔は、さっぱり冴えなくなってしまった。のみならず、眼は狐疑をあらわし、暗にあんたやわれわれを、忌み恐れる風もみえた」

「はてな。そいつア、気がつかなかったが」

「彼の幕僚、杜選、宋万の二名は平凡、ひとり豹子頭林冲なるものこそ英俊と見えた。――林冲はいぜん京師で、近衛軍の兵法師範を勤めていた者とか。おそらく彼は心から王倫に服している者ではないとおもう」

「王倫の小人物であることは、かねがね聞いてはいましたが、しかし、ここへ来て、こう厄介になる以上は」

「いや、どっちみち、このままではおさまらんよ。わしに一計がある。寨の内輪に同士討ちを起させ、一ト波瀾はみようが、その上でここの不満不平を一掃させ、そして規律と序列を正そう」

翌朝のことである。――前夜、噂をしていた林冲が、朝のあいさつに見えた。

呉用が、皆に代って、昨夜の礼をのべると、林冲は、薄ッすら笑って、

「いや、ほんとのご歓待なんてものは、形や物ではありません。