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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「いったな林冲、後刻、眼にもの見せてやるぞ」

「おお、いま見せて貰おうか」

「喝ッ。うごくな」

せつな、呉用が大手をひろげて、両者の間に立ちはだかった。

「ま。お待ちなさい。……要するに、これはわしたちがこれへ来たことがいけなかったのだ。晁蓋さん」

「おう、先生。なんですか」

「見た通り、わしたちのため、とんだ不和を山寨に招いてしもうた。きれいに、お暇して、ここは退散しようじゃないか」

眼くばせすると、ほかの五名も、いちどに、どやどやと椅子を離れて、

「さあ、行こうぜ」

とばかり、一トかたまりになって、亭の階段を降りかけた。

王倫も、これにはちょっと、いやな気持ちを覚えたらしい。あわてて、追っかけるように、

「やあ待ち給え。そいつはちと気が早い。もう一盞、機嫌直しを飲って、こころよく乾杯した上、お別れしよう」

とたんに、末席の椅子が、横に仆れた。卓の果盆も引ッくりかえる。ずかずかと、林冲の大きな背丈が、王倫の方へ真ッ直に向って来かけたのである。

と見るや、呉用は、

「えへん!」

と、咳払いしながら、左の手で、長いあご髯を一つ横へしごいた。それを合図に、

「あっ、同士討ちはおよしなさい」