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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

されて来たのだった。

城県の知事時文彬はいま、庁の書記長の宋押司に、一書類を示して、

「どうも気の毒なことになったな。済州の奉行は失脚して、次の新奉行と代ったらしい。これは先の七人組の大盗の逃亡始末と、梁山泊一帯の地理やら内容を報じてきたものだが……。ひとつ、これを書記班で複写させて、至急、県下一帯の郷村に配布させてくれんか」

といった。

「承知しました。大変ですなア、どうも」

宋江はすぐさま、書記室へ行って、その手順をとった。

彼には若くて頭のいい助手がある。張文遠という者だった。村里への配布は張にまかせ、黄昏れごろ、宋江は、役署を出て、いつも見馴れた町角へかかってきた。

「おやまあ……。これはこれは、押司さまじゃございませぬか」

出会いがしらの声に、誰かと思えば、横丁に住む周旋屋の王という痩せ婆さんだ。この口達者な婆さんがまた、もひとり後ろに、肥ッちょなでぶ婆さんを連れていて、

「閻婆アさんよ、お前はまあ運がいいよ。ついさっき、私がお噂をいってたろ。……あの押司さんだろうじゃないか。よくよくご縁があったんだよ、さあご挨拶でもおしなねえ」

「これこれ婆ども。