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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
案内の州役人らの次に、彼は山輿にゆられ、部下百騎は勅使旗をささげていた。
龍虎山一帯は、古来、全国の信仰をあつめてきた道教の大本山だ。
唐代このかた、歴朝の帰依ふかく、その勅額は、朱の楼閣にも仰がれる。渓谷の空には、苔さびた石橋が望まれ、山また山の重なる奥までも、十三層塔が霞んで見えた。また、道士たちの住む墻院、仙館は、峰谷々にわたり、松柏をつづる黄や白い花は猿や鶴の遊ぶ苑といってもよいであろうか。
ところで、この仙境は、その日とつぜん、眼をさましたように、一山の鐘台から鐘の音をゆり起した。木々は香露をふりこぼし、園の仙鶴は羽バタき、全山の禽獣も、一せいに驚き啼いた。――見れば、三清宮から大石橋へかけて、院主の大師以下、道士、稚児、力士(寺侍)などの群列が、彩霞のごとく、香を煙らし、金鈴や小鼓を鳴らしながら今し勅使の洪将軍を仙院へ迎える礼をとっているものだった。
「大儀である」
洪は、大きく目礼をほどこしながら、仙館へ入った。
えならぬ仙味の献茶一ぷくを、すずやかに服み終ると、彼はただちに、勅の主旨を、院主につたえた。
「――過ぐる日の上巳の祝節。わが仁宗皇帝におかれては、打ちつづく世の悪疫を聞こしめされ、いたく宸襟をなやませ給うた。