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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

台所へ入った閻婆は、鶏の肉をほぐしたり、窯の火を見たりしながら、内心、舌を出していた。男と女とは、窒塞する場所へ一ツに入れておけば自然なるようになるものというのが婆の哲学だった。やがて焙り肉や羹も出来、飴煮も皿に盛られ、婆はほどよいころと、料理盤を持って、二階部屋をそっと開けた。……ところがである、婆の哲学は、案に相違していた。

「…………」

見れば、どっちも黙りこくって、じっと向いあっているだけのことだった。――呆れた! という顔つきで、閻婆はわざと大きく笑った。

「ま! どうしたの、だんなもこの娘も、まるで花聟花嫁さんだよ。いいえ、この頃の新郎新婦はもっとひらけていますとさ! さあ、これへお箸でもつけて」

また、婆さんの酌である。酌げば飲む宋江だった。酔わせるに限るとしてか、たてつづけに閻婆は酌ぐ。――そのうちに、

「酌いでよ、おっ母さん」

と、婆惜も杯を持った。閻婆はやれやれと思ってか、

「そうれごらんな。やっぱり、お腹のなかでは欲しいんだろ。さあお飲り」

「なにいってんのさ、ひとの気も知らないで。やけ酒よ、これは」

「だんな、やっと、この娘のしんねりむっつりが解けましたよ。