轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

彼の足業は虎をして狼狽させた。しかも尻へ尻へ狙け廻って来る人間の素早さに、虎はクルクル自転せざるを得ず、それには虎もいささか眼が眩み出して来たように見える。

武松は手馴れの棒を拾って小脇に持った。棒の秘術は虎の眸のなかに奇異な幻覚を持たせたにちがいない。何十人もの人間の影がまわりにあって、じぶんを弄るように見えたであろう。その猛吼も飛跳も次第に弱まり、いくたびか棒を咬んだが、その棒テコでも苦闘に落ちる。武松は迫って、また白額の毛の根をつかみ、十打二十打の鉄拳をつづけさまに下した。虎は目鼻から血を噴き出す。呻きは全山を震撼する。さらに蹴る。滅ッ多打ちに打ちのめす。苦しさの余り虎は腹の下の土を掘った、虎のからだの両側に小山ができる……。ついに、みずから掘ったその坑に虎はがくんと躯体を鼻をついた。

武松もまた、ぐたっとなった。大息ついたまま茫然としていたが、はっとわれに返るや短刀を抜き、虎の脾臓、心、肺のあたりに幾太刀となく、とどめを刺した。鮮血は腕を濡らし、袖は緋のまだらに染まった。

――その姿が、やがて景陽岡を西へ越え、夜明けぢかくの道をふらふら村のほうへ降りかけていた。