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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「もったいない、そんな他人行儀なんか仰っしゃらないでよ。でも、その兄さんに、あなたみたいな立派な弟様があろうとは思いませんでしたわ、ほんとに。――二郎さんはお幾歳ですの」

「二十五ですよ。はははは、旅の草鞋もいつの間にか」

「じゃあ、わたしと二つ違いですのね」

ひょいと、彼女の眸を眼にうけて、武松はいわれもなく胸がどきっとした。――そこへ階段の下から武大が魚菜や肉を籠いッぱい入れたのを抱えて上がりかけて来た。

「金蓮! ……。ほら、ほら、こんなに仕入れてきたぜ。市場の衆がみんなびっくりしてやがるのさ。武大さん、今日はいったい何のおめでたがあるのかネって」

「あらっ、この人ッたらまあ」

金蓮はつい日頃の調子を出して、武大の出鼻を口汚くののしった。「――そんな物、なんだって、わざわざ二階へなぞ持って来るのよ。台所へ置いといて、料理の手伝いには、お隣の王の婆さんにでも来てもらえばいいじゃありませんか。……これですものネ、二郎さん」

さて、その晩は、ともかく兄夫婦のもてなしに、武松もすっかり酔っぱらった。わけて金蓮のとりなしは手に入っている。武大と連れ添う前までは、さすが清河県第一の富豪の邸に飼われていた女奴隷の使女(こしもと)だけのものはあった。