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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
考えてみると四十日余りの不沙汰だ。開封東京といっては早くても二ヵ月余、もし天候にめぐまれなければ三月は旅の空になる。
「そうだ。あれきりじゃ何かお互いに気まずいままだ。ひとつ酒でも提げて行って、ひと晩、機嫌直しをして立とう。あんな嫂でも、兄にすれば満足している大事な女房だ。俺さえ折れていればいいことだし」
彼は酒や肉を買って片手に抱え、また嫂のよろこびそうな手土産なども二つ三つ持って、久しぶり紫石街の茶店隣の芦簾を覗き込んだ。
「まあ、二郎さんじゃないの。どうしたの、いったい」
「嫂さん、どうも、いつかは何とも相すみません。いくら酒の上でもね」
「もういいわよ、そんな過ぎたこと。まアお上がんなさいな二階へ。良人もじきに帰るでしょうから」
「じゃあ、待ってましょう。嫂さん、これ、ほんの手土産ですが」
「あら、わたしにまで。すみませんのね。まあまあお肉やらお酒もこんなに沢山に」
金蓮はすっかり穿き違えてしまった。女にはよくありがちな心理でもある。武松がてれ臭そうに訪ねて来たのは、私に未練があるからだと自分に都合のいい解釈をしたものだった。もちろん未練なら彼女のほうこそ、たッぷりである。