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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

受け損じたら、命はねえぞ」

「これは迷惑。お気にさわったのなら、平に平に」

「いけねえ、いけねえ。その頬ゲタか肋骨の二、三本も、ぶち砕かねえうちは、おれの虫がおさまるものか」

ところへ、あるじの太公の声がした。

「これっ、史進っ。お客人に何をする」

「あ。親父さまか」

「ひかえろ」と、太公は息子を叱って――「客人。……どうも伜めが、とんだご無礼をいたしましたが、このとおりな田舎育ちじゃ、ま、堪忍してやってくだされい」

「いやご主人、こちらも悪かったのですよ。若いお人が一心不乱に、気を研いでいるものを、思わずニヤニヤしたりしたものですから」

「これも、何かのご縁というものじゃろう。ひとつ、この伜への置き土産に、棒術の一手なと、お教えして下さらんかの」

「めっそうもない。てまえは、しがない落魄れ商人、棒術などは」

「いやいや、わしにはあなたの五体のうちに、何かご一芸があるものと見える」

「よしなよ、父さん。買いかぶるのは」

史進とよばれた若者は、父の前から、いきなり王進の胸をつき飛ばして罵った。

「おやじは今、おかしなことをいったが、おれは、てめえみたいな旅烏にご教授をねがうの、ご一芸がおありでなんてことは、おくびにもいわねえぞ。