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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
それは西門慶ほどな男さえも、かつて味わったことのない無性な挑みと情熱のふるえだった。
「どうしたい。え。なにを慄えるのさ、金蓮さん」
「だって。……だって、もう」
「怒るかしら」
「なぜ」
「こんな目にあわせてさ」
「知らない。どう、どうにでもして」
「しずにはおかないよ」
西門慶は体も大きい。金蓮のしなやかな四肢は、締めころされるようなかたちを乱した。しかも悠々と男には余裕があるのに、彼女の指の先は処女のごとくどこでも無性につかみ廻って、背は、床をズリながら身伸びに身伸びをつづけてやまない。が、すぐ男の胸の下に、死に絶えたような息をつめてしまった。――そして今し、彼女の枕なき枕もとには快楽の国がうつつと入れ代りに降りていた。とつぜん、金蓮の飛魂のすすり泣きは、西門慶を狂猛にさせた。男のふところ深くへ細やかな襟頸を曲げ、また仰け反っては、狂わしげに唇をさがしぬく黒髪にたいして、彼は意地わるく唇を与えないのだった。彼女は悲鳴のうちにいちど気を失って徐々に力を脱いた。男の唇はやっと彼女に与えられ、神丹を含ますように、彼女の精気を気永に扶けた。まもなくまた、彼女は濡れた眸で虹のような妖笑をふとあらわした。