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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「そ、そりゃあ、おめえ、ほんとにいうのか」

「もう隣へは行きません。昨日だって行っていないでしょ」

「ああ。……そう聞くと、急に体を早く癒したくなった。金蓮、おらあやっぱり死にたくねえ。働くよ。癒ったら、うんと働くよ。そしたら、いくらおめえだって、浮気心もおこすめえ」

「いいえ。わたしこそ悪かったのよ。はやく癒って……ね。ねえ、おくすりでも飲んで」

彼女は婆からそっと授けられた劇毒の砒霜をつねに身に秘していた。とはいえ、疑い深い病人に滅多にはやれないと思って細心に機を窺っていたのである。

「からだに力をつけなければ」

と、やたらに美食を与えるのを、武大は逆に、金蓮が改心した証と感じて、よく喰べる。一夜、そのために、武大は夜半に苦悶しだした。今こそと、彼女は砒霜の粉を碗に溶かして、武大に飲ませた。劇毒のあらわれは、たちどころに、武大は七顛八倒もがき廻った。そして近所へも響き渡りそうな絶叫を発しるので、彼女は武大の体に蒲団をかぶせた。絹を濡らして、武大の鼻から口を塞いだ。夜は深沈……まだ燭に油は尽きてもいないのに、ジジジ……と灯火が哭く。

金蓮は恐ろしくなって、ととと、と二階を馳け降り、王婆を呼ぶと、かねて諜し合ってはいたことだ。