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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「いただいておきねえ。坊の小世帯なら、十月や一年は暮らせるだろうが」
「ありがと……」と、※(「軍+おおざと」、第4水準2-90-23)哥はすっかりよろこんでしまった。だが、そいつが何の代償か、町ずれしている少年だけにすぐ察していた。「……じゃあすっかり話すけどね、おじさん怒ッちゃいけないよ」
彼はぺらぺら喋り出した。――もう五十日ほども前のこと。西門慶の旦那がよく行く王婆の茶店の奥で、その日も旦那と金蓮が逢曳きしているから、そこへ行けば小費い銭になるぞと人に唆かされて、さっそく果物籠を頭に載ッけて行ってみた。
すると。――店先で張番していた王婆のやつが、何としても寄せつけない。
まるで人を野良犬かなんぞのようにあしらッて、あげくには打ン撲ったり、果物籠まで往来へ抛り出して、水でも打ッかけそうな権まくだ。
さあ、おらも口惜しくて堪らない。「みていやがれ……」と今度は別な日。――日ごろ仲よしの、饅頭売りの武大さんを公園で見つけて「おまえの女房は間男してるよ」と、すっかり告げ口してやった。
そこで武大さんと諜し合せ、姦夫と淫婦の現場を抑えろと、二人で二度目の襲撃をこころみたのだが、何しろ王婆の警戒がきびしい。