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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「じ、二郎さん。いッちまうよ。……いうからさ、堪忍して」
「さあ、その口で早くいえ」
「だ、だって、くるしい」
「それ、こうしてやらあ。神妙に泥を吐けよ」
女の鳩尾から膝を離して、引きずり起し、その眼さきには、依然、短剣を突きつけていた。
もう半ば人心地はない金蓮に見える。青白い瞼をふさいで、西門慶と出来た事の始めから、王婆のとりもち、毎日の秘か事まで、神おろしの巫女が喋るように、また、他人事みたいに、それからそれと、自白しだした。
「……ちいッ、引っ腰もない」
と、歯がみをしたのは婆である。婆には娑婆気や妄執も一倍深い。だが、とどのつまりは、王婆も一切を白状するしかなくなった。――そして、両者こもごもの自供は、胡正の筆記で、洩らさずそばから口書きとなっていった。
「ようし、ひと先ずすんだ。その口書きを、こっちへよこしてくれ」
武松は入念だった。婆と金蓮の二人にそれへ爪印を捺させ、名まで書かせた。同様に立会人として、近所一同の署名を乞い、それは折り畳んで、自分の肌身に深く仕舞い入れる。
「従卒。祭壇のお明りが消えてるぜ。新しいお燈明と、もいちど、お酒を上げてくれ。