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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

その株というのは、酒と肉を売る大きな店で、盛り場のまッただ中。――一には父の背景、二には彼自身の剣の腕前、三には獄営内から引っこ抜いた気の利く乾分七、八十人。それらの条件にものをいわせて、花街一帯から、宿屋、ばくち場、両替屋出入りの客などをお花客にして、大きな商賈となっているうえ、渡り職人や、旅稼ぎの女芸人にいたるまで、他国者が入市するには、ぜひとも、

(ここで幾月稼がせていただきます)

と、施恩の店へあいさつに出て、つけとどけをしなければ土地で働けないような仕組みになっていた。

で、その収入は莫大なもの。少ない月でも、銀子で二、三百両のあがりは欠かさない。

「はははは、そいつあちっと、良すぎますなあ」

武松は聞いてるうちに笑いだした。

しかし、施恩は、雑談も交じえず「あなたを見込んでの、事情というのは、これからで」と、いよいよもって、熱語をつづける。

流刑地のつねとして、この孟州にも、強力な一師団の兵営がある。

近ごろその軍団長の張という将軍が、東州から赴任してきた。さらに、その張将軍が腰巾着として連れて来た男もある。

それが、あだなを蒋門神という稀代なのっぽで、身の丈九尺余り、槍も棒も、拳も脚もきくという凄者。