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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

わざと二人は鎖を追って、下は不気味な深い瀞と見える崖ぷちへ連れて行った。

「……アア、いい気もち!」

武松が用をすましたか否かの一瞬である。一颯の剣光がサッと彼の影をかすめた。と見えたと思うとドブンと瀞の水面に飛沫が上がり、つづいてもう一人は彼の足蹴を食って、

「あっ――」

と、後ろの役人と共仆れによろめいていた。

「見損なうな! 俺を」

一喝、朱をそそいで太く膨らませた武松の喉首から、ぱんと首カセの蝶番いが刎ね、喉輪の邪魔物は、二ツになって飛んでいた。

わっと、逃げる役人を、両の手につかんで、江のうちへ叩き込み、さらにもう一名の刺客へ追ッついて、

「野郎っ」

と、どなった。その声だけで、男は意気地もなくヘナヘナと腰をついて、

「都頭っ、命だけは」

と、地に這って拝んだ。

刺客三人は、蒋門神の弟子だと分った。武松はその男を裸にさせた。そして自身の獄衣を脱ぎ、そっくり着がえて、男の持っていた大きな野太刀まで召上げてから、

「てめえ一人が無事で帰っちゃ、仲間の義理が欠けるだろう。生き死には、水神様に相談してみろ」

と、それも一ト抓みにして、江の急流へ投げ飛ばした。