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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「ありがとうよ。骨身にこたえる」
草鞋をはいて、ここを立つのも、わざと夕方をえらんで立った。折ふし、頃はすでに十月の短か日。落ちかける薄ら陽の林から舞いとぶ落葉が、振り返り振り返り行く、白い行者姿を横に吹いていた。
音に聞く蜈蚣峰の晩秋もうしろに越えて、道は青州二龍山の方へと、一日一日、近づく冬の歩みとともに、二十日余りを重ねていた。
「ううっ……。めっきり寒くなったぞ」
その日、武行者は一軒の山里の小酒屋にとびこんで、思わず、赤子が乳を求めるように呼んでいた。
「亭主、熱いとこを一本飲ませてくんな」
「行者どん。濁酒ですかえ」
「うんにゃ、上酒がいいね。それと肉のうまいとこを二斤ほど」
「そいつあ、おあいにくさまです。どぶろくのほかはございませんよ」
「肉もか」
「煮しめの一皿もさし上げましょうか」
武行者は、おもしろくない顔で独酌をやっていた。とかく張青の意見があたまにある。この虫がいけないンだな、と思いながら飲む酒なのでよけいに何かホロ苦い。
「オオこれはこれは、いらっしゃいまし」
急に愛相変りな亭主の声に、ひょいと入口を見ると土地の者か三、四人連れ。
わけて一トきわ目立ったのは年二十四、五の白面の少年郎。