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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「だからまだ、お互い、修行は足らんといっているのさ。おまえにとっては、いい経験だったよ。凄い行者もあったもんだ」

「して、どうしました、あの怪行者は」

「庭の槐にふん縛ッておいた。半ば昏々として、何かぶつくさ言っている」

「どんな文句を吐ざくのか、ひとつ聞いてやりましょう。おい誰か、籐の鞭を持って来い」

一人の荘丁の手から、それを受けとった兄弟の者は、大庭の西にある槐の大木の下へつかつか寄って、やがて四、五打の籐の唸りと罵声を、武行者の上にあびせかけていた。

「……あ、ご兄弟」

すると、書院とおぼしき一亭の前から呼びとめる人があった。静かに、散歩でもするような足どりで、側へ来て、

「ま、およしなさい。ご自身そんな手くだしは、つまらんではありませんか」

「いや先生。こいつ捨ておけん曲者ですぜ。村のしめしのためにもです」

「聞きましたよ、委細のいきさつは。けれど人間、せつなの感情では、時に思慮を欠くことはお互いにもありますからな。ましてご舎弟を屈伏させた腕前もあるほどな男と聞いては、どこに見どころがあるかもしれない」

「じゃあ、助けろと、仰っしゃるんで?」

「もしまた、真の悪党だったら、どんなにでもなさるがいい。