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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「ふウむ。強さのほどは察していたが、そんなにも強い九紋龍なのか」
「てんで、おはなしにも何もなりません」
と、手下どもはまったく闘志を失っていう。
けれど、朱武と楊春は、まさかここから逃げ戻れもしない。それこそ山寨七百人の手下の信望は地に墜ちてしまう。といって、最初から九紋龍史進に立ち向えるうぬ惚れもなかったのだ。楊春はその白面を一そう蒼白にして。
「どうする。兄貴」
「こうなっては、どうもこうもない。おれにまかせろ」
朱武が得意とする智略が、何かひらめいたものだろうか。朱武は、たちどころに、手下のすべてに足止めを命じ、自分と楊春の二人だけで、史家村の内へ近づいていった。
すぐ見つけた荘戸の土兵は、二人を取り囲んで門内へしょッ曳いた。――見ると、邸内の広い柳園では、諸所に篝を焚き、まん中の一樹に生け捕ッた陳達を縛りつけて、今しも、それを肴に大ざかもりの最中だった。
「なに、朱武と楊春の二頭目が自分から縄目を望んでこれへ来たと。はてなあ。そいつはどうも眉ツバものだが」
史進は、陶の酒樽に腰かけていた。
鱗革に朱紅の漆やら摺り金箔をかけた甲を着、青錦の戦襖に黄色の深靴をはいていた。