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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

わけてあの、それしゃ上がりの細君ときては、虚栄心のかたまりみたいな女なんだ。そんなやつを、助けてやることはなかったですよ」

と、いっそ山賊の女房が適しているといわんばかりな口吻だった。

が、宋江は笑って、

「女子と小人。珍らしくもありませんよ。恨みは解くべし、結ぶべからず。いつか鎮台でお会いになったら、それとなく劉高へはなしておやりなさい」

「おう、ぜひ言ってやりますとも」

「いかに小人でも、救われた恩は忘れてはいないでしょう。自然、君にたいしても以後は好意をよせるにちがいない」

花栄は感服した。宋江のどこまで人を憎まない寛濶な態度には自然頭が下がる。

彼ばかりではない。宋江はよく郊外の仏寺や盛り場などを見物に出歩いたが、花栄がつけてよこす従者たちには、酒食その他、びた一文も支払わせたことがなく、それが彼らの収入にもなったから、

「いやしくない客人だ。温雅なお人だ。ご親切なお方だ」

と、下僕の端にまで、その気うけは頗るいい。

はやくも年は明けて、街は初春気分だった。

その正月十五日の元宵祭は、大王廟の境内を中心に、鎮城の全街が人出に沸く。

辻には燈籠門が建ち、軒々から大王廟の参道まで、花燈籠の千燈にいろどられ、掛け屋台の芸づくしやら、龍神舞やら獅子行列やら、夜どおし、月の傾くまで、上下の男女、歓をつくすのが慣わし