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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
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今上、徽宗皇帝の後宮三千のうちに、慕蓉貴妃という皇帝の寵姫がいる。
青州奉行は、その貴妃の兄にあたる人なので、姓にも二字の慕蓉、名も二字名で、彦達といい、妹の威光を逆に兄がかさに着て、いやもうえらい羽振りなのだった。
「なに。――劉長官の上申だと。どれ見せい」
慕蓉は側近の手からそれを取上げ、一度ならず読み返した後、はたと文書函の蓋をした。
「これで見ると、鎮城の花栄は、軍を私兵化して人民の財をしぼり、あまつさえ清風山の賊魁と通じて、事ごとよからぬ働きをしているとあるが……。花栄も都の功臣の子、劉高はまた文官のきけ者。はて弱ったものだな」
と、熟考のすえ、「しかし、捨ててはおけん。黄信を呼べ」
となった。
州軍の警備総長黄信、あだ名は鎮三山、さっそくにやって来て、慕蓉の台下に、拱叉の拝を執ってひざまずいた。
州の管下には、古来警備に手を焼いている険悪な山岳が三ツある。一が清風山、二が二龍山、三が桃花山、それである。
いずれも山は険で、強盗追剥ぎの屈強な雲窟だった。けれど武技腕力にかけて絶倫な黄信が、みずからその警備軍の長を買って出て「――我れ出でて三山に鬼声なし」