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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

官兵五百のほとんどは、これでかたがついてしまった。しかしかねてから賊の手下に命じておいたことだから、いちど溺死しかけた秦明の身だけは、やがて縄目にされて曳かれて来た。場所は賊殿の本丸である。賊は“山寨の聚議場”とそこを呼んでいる。

「やっ、花栄だなきさまは。おれは生け捕られたのか。だのになぜおれの縄を解く。……さ斬れ、花栄。なぜこの秦明を八ツ裂きにせんのだっ」

「秦総監。――夜来の失礼はおゆるし下さい。あなたを殺すなといっているのは、そちらにおられるお方です」

「なにっ?」

秦明は血走った眼を横へやって。

「さては、なんじが一山の賊の首魁か」

「ちがいます――」花栄が言って、彼の眸のやりばに注意を与えた。

「賊のかしらは、こちら側に居並んでいる者たちで、上から順にいえば、錦毛虎の燕順、矮脚虎の王英、白面郎の鄭天寿」

「賊でない奴が、ここにいるはずはない。花栄、きさまも今は張本の一人だろうし、そこの椅子にいる色の黒い男も、いずれは悪党の頭株にちがいあるまい」

「いいやそのお方こそ、宋押司です」

「押司だと」

「山東の及時雨、宋公明さんですよ」

「げえっ。この人が?」

「よっく心をおちつけてご対面なすってごらんなさい。