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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
史家の奉公人頭に王四という男がいる。使者にはこの男に作男一人をつけてやった。二人が麓まで行くと、山賊の見張りに捕まった。しかし、
「九紋龍さまのお使いで」
と聞くや、彼らが先に立って、山寨へ案内した。なおまた、朱武たち三頭目も、王四の労をねぎらって、下へもおかない。酒や馳走を出して、
「一日も史進どののご恩は忘れていない」
といったりした。そして、使いの二人へ、帰りがけには十両の銀子をくれた。
史進は、王四の復命をきいて、
「そんなに歓んだか。また、そんなにも、おれのことをいってたのか」
と、これも悪い気はしなかった。
こうして、彼らとのつきあいが深まるにつれ、史進は相手が山賊であるなどという念もなくなっていた。ただ男と男の交わりとしていた。
そのうちに、秋もなかばの頃、史進は月見の宴を思い立った。ひとつ仲秋の名月に酒壺を開いて、あの朱武、楊春、陳達らの三人と、思うさま飲んだり話してみたいものだと考えた。そこでまた、いつもの王四に、招待状を持たせて少華山へやった。
朱武たちが歓んだのはいうまでもない。
「――必ずまいる」
と返書をしたため、それに四、五両の使い賃をのせて、王四へ渡した。