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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

しかし考えると居ても起ってもいられない。

「山寨の衆、お願いがある。すでに亡い命を、拙者におあずけ下されたうえ、なお虫のいいお願いだが」

「なんですか、いってごらんなさい」

そばにいた燕順がこう聞いてやる。秦明は首を垂れて言った。

「拙者のよろいかぶと、狼牙棒。それと馬やら兵器やら、なお生き残りの部下がいたら、あわせて、返して下さらんか」

「で、どうなさるつもりです?」

「州へ戻って、慕蓉閣下のまえに罪を詫び、また、文官劉高の日ごろの悪と、偽訴の次第を、事つまびらかに申し上げて、治下の秕政を正す献策の資といたしたい」

「それはご殊勝なこッてすな」と、燕順はニガ笑いして――「ですが総監、そいつアどんなもンでしょう。五百の官兵を失ッて逃げ帰った不届き者と、逆に暗い所へぶち込まれるのがせきの山じゃございませんか。どうです! それよりはいッそこのまま、ここの荒山草寨をお住居として、ひとつ渡世の道を考え直してみなすッては」

すると、秦明は奮然と色をなして、賊殿の一室から外へ出てしまった。

「いかに囚われとなろうが、この秦明の腸はさほど腐ッてはいませんぞ。家代々朝廷のご恩をうけ、身は州の兵馬総監。