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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
船上では、小さい信号旗が振られていた。
――と、陸寄りの入江から、一そうの漁舟と、三人の漁夫ていの男が、花栄の前へこぎ寄ッて来て、ひらと陸へとびあがり「さ、こっちへ」と、道案内に立ってゆく。
車も埋まるばかりな葭芦の間の道を幾曲がり、やがて、かの埠頭の朱貴の茶店までやって来ると、早やさっきの二艘も何処やらに着き、
「いざ、お手紙を拝見しよう」
と、林冲が先に来て待っていた。
しかし、林冲はそれを自分の手で開封したのではない。ただちに、鳴鏑の遠矢を射、対岸から使い舟を呼んで、それをどこかへ持たせてやったのだ。
「みなさん、さだめしお疲れだろう。おそらく吉左右は明朝のことになる。今夜はここでゆるりと、野営なさるがいい」
林冲は、一同をねぎらった。
また茶店の朱貴は、大甕十箇の酒をあけ、三頭の黄牛をつぶし、ぞんぶんに大勢の腹を賑わした。
あくる朝。美しい桃色の春の晨だ。
山寨の軍師、呉用学人は颯爽と一舟をこがせて、これへ先に渡って来た。
そして、花栄、秦明以下の、おもなる面々と、いちいち親しく名のりあって。
「宋公明君のご書状に照らして、寨中の頭目ども評議の結果、よろこんで、ご一同を梁山泊へお迎えいたすことに決めた。