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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
と啖呵をきッて抵抗しかける。そいつを相手に張横が芝居の格闘を演じたうえで揚子江に叩ッ込む。
もういけない。舟中はどれも生きた空のない戦慄だけのものになる。張横はにんやりとし、ぞんぶん一人一人のふところをゆすッて、銀や持物をとりあげ、ほどよい岸へ着けて追ッ放してやるのだ。――そして舟で火を焚いていると、やがて弟の張順がその白魚のごとき体に水を切って川の中から舟へ這いあがってくる。
という寸法で、ずいぶんこれで荒かせぎをしては、酒、ばくち、女などにつかい果たしていたが、近来はこの手ぐちも評判になって、さッぱりになってきた。そこで、弟の張順は足を洗って江州で魚問屋に変り、張横は依然この界隈で、不景気面な板子稼業にぼやいて、こそこそ悪さをつづけていたところだった。
「いやどうも」
と、張横はあたまを掻いて。
「あまりお上品な身の上ばなしじゃございませんが、宋押司さんと伺っては、ちっとの嘘も申しあげては相すみません。正直なとこ、そんな外道でございますが、これでも折があったら真性な人間になりてえと願ってるんで。へい、江州へおいでなさいましたら、あっしが手紙を付けますから、魚問屋をやっている弟の奴にも、いちど会ってやっておくんなさいまし」