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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

夕陽は赤い半輪をしずめかけ、江の波は青く透いていた。白きは浪裏白跳の張順の四肢か。黒きはさすが弱りぬいた李逵のもがきか。瑤々たる波騒いのかすかに立つところ、見ゆるが如くまた見えぬようでもある。

すると一瞬、からみ合った両者の肉体が、ぼかと波上に浮き出した。それは白龍に巻きつかれた水牛の吠えに似ていた。陸の黒旋風も水中では手も足も出ず、張順の思うままに溺らされて、七顛八倒の飛沫をたてたが、またたちまち、もくもくもく……と水中深くに引きずり込まれた様子だった。

戴宗思わず両手をあげて辺りへ叫んだ。

「漁師どもっ。早く行け。わしは江州牢城の戴院長だ。ふたりを引き分けて連れて来いっ」

戴院長と聞いては驚かぬ者はない。すぐ一舟が矢のごとく岸を離れ、ほどなく双方をもぎ離して連れ帰った。――といっても、浪裏白跳の張順は、颯々と水中を馳けるが如く一人泳いで先に岸へ着き。

「どうも相すみません。院長さんとは少しも存じませんでした」と、すました顔。

李逵もやっと舟から這い上がって来て、

「てへッ、ひでえ目に会わせやがった」

と、鼻や口から三斗の水をゲッゲッと吐いた。

「ともかく、話は彼方の琵琶亭で」