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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
のみならず、江州界隈で義をむすんだ男どもにも顔がたたん」
「でも、こんなおろかな因を作ったのは誰でもないこの宋江自身です。たれがあなたを不義としましょうか。たとえ偽狂人など装ってみても、しょせん、宋江にはよく出来る芸ではなし、醜態をかさねるだけです」
「ま。そうあっさりと、あきらめないで」
「いや天命に従います。それしかない。もしあなたが、いさぎよしとしないなら、私自身で自首して出る」
もう説きようはない。また策もない。
戴宗は長大息した。まもなく、一軍の中に宋江を押っつつみ、蔡九奉行のいる大城の一閣へ入って行った。
あらゆるむごい拷問道具や獄具が白洲に用意されてあった。ここでは血の焔が燃えるのである。だが覚悟のていであった彼には、さまざまな苛責もくだしようがない。口述書をとられ、死刑囚用の重さ二十五斤の首かせが篏められ、その夕、大牢の闇へほうり込まれた。
わずかに、一つの倖せは、命を奉じて、戴宗がさっそくに宋江をこれへつき出していたので、蔡九もその戴宗にたいしては、なんの疑惑も挟まなかった。で、大牢の監視から食事なども、一切彼に委されたことだった。
その夕、一方では奉行蔡九がその自邸で、黄文炳を相手に、