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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「じつはな宋清。わしもついに、梁山泊のほかには、この天地に身を置く所もなくなった。……それで老父とおまえを、山寨へ迎え取ろうと思って来たわけだ。さ……すぐ支度してくれ。父上にもそう告げて」
「と、とんでもない! ……」と、宋清はすぐ手を振った。そしていうには、「江州での騒ぎから兄さんの身元には、すべて手配が廻って、県でも網の目を張っています。ましてここの家を放っとくはずはありません。役署の捕手頭、趙能、趙得のふたりが、たえず部下に巡邏の目を光らせているんです」
「えっ。それではどこかに県の巡邏が見ているのか」
「私たちは囮です。親思いな宋江だから、いまにきっと、これへ立廻るにちがいないと、わざと元のままにおいているのですから、それに引っかかれば、老父も私も、また兄さんまでも、しょせん無事にはすみません。……いっそ救い出して下さるものなら、梁山泊のお力をかりて下さい。大勢の加勢がなければとても村は出られませぬ」
宋江は大いに後悔した。
晁蓋や呉用があんなにいってくれたのに、と今さらな悔いを禁じえなかった。だが早やどうしようもない。ふたたび戻って頼むしかあるまい。