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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

そして。

「さ。もうこの土地に名残はねえ」

「オオ、おさらばだ。急ごうぜ」

各※(二の字点、1-2-22)、踵を回して、急ぎかけると、

「いや、ちょっと待て」

李雲はなお、辺りを見ていたが、何か耳打して、三名の先に立ち、藪の横道へ走り込んだ。そこの突当りには、州の牧場管理所がある。李雲は牧夫小屋の牧夫を呼び出し、八頭の駿馬を目の前に揃えさせた。そして、李逵、朱貴、朱富、自分――と四人四頭の背にまたがったうえ、

「拙者は山寨へ初めてのお目見得だ。みんなが乗った馬のほか、べつな一頭ずつを手綱で曳ッ張って行こうじゃねえか。どうだな、この手土産は」

「こいつはまたとねえ土産だが、しかし師匠、四頭もべつなのを曳ッ張って行くのは余計物じゃありませんか。第一急ぐ道中には邪魔くさい」

「いや邪魔にはならん。先に行ったという箱馬車には、朱富の若い者が幾人か付いてるだろう。すぐその若い者たちに乗せればいい」

聞いていた牧夫たちは驚いて叫びあった。

「捕手頭! 馬は県城の御用に持って行くんじゃないんですか」

「おおさ、われわれは、こよい万里の外へ馳け去るのだ。追ッつけ県城の軍隊がやって来るにちがいないが、もしこれへ来て、李雲は何処へ行ったと訊ねたら、名の如く、雲に乗って消え失せましたと告げておけ」