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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
だが如海の方はあわててその唇にすぐ唇を与えるでもなく、
「ネ……。いつも、楊雄はどんなふうにするの」
と、海棠の花みたいな耳たぶを、噛むでもなく舐ぶるでもなく、歯で弄びながら囁いた。
「酷いわ」
と巧雲は拗ねて少し怒った。
「だから断っておいたじゃないか」
のしかかっていた如海の体は、後半身を揚げて顔を女の腋の下に埋め、そのあたりから徐々に乳部を残して柔軟な肌を舌で探って行った。女は縒切れるように身を縒じる。苦痛の火にちかいうめきを歯の根にかんで熱い息をあらく吐く。それがとつぜん死んだように熄んだ。如海の青い入道頭の頸すじあたりに女の雪をあざむく太股が挙げられて、男の顔のありかもない。ただ津々と地下泉の湧く渚に舌をねぶる獣のうつつなさといった姿態。そしてそのうちに女の鼻腔が昏絶のせつなさを洩らしたと思うと、彼はやにわに胸をのばして巧雲の唇へ移った。女は夢中で女自身の津液をふくんだ男の口を奪い、刹那、狂奮して顔を烈しくふるわせた。むしゃぶり啖らう勢いで如海の舌のその奥の根元までを痛いほど吸った。なおかつ如海は加えるものを与えず、女の蘭瞼をむごたらしく上から見すえる。