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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「何を」
「今日が今日まで、じっと我慢していたんですけれど。……畜生、わ、わたしにこんな汚名を着せて、あなたとの仲を裂こうとするなら」
「ま、まさか、夫婦仲を裂こうなんて、そんな石秀じゃあるまいに」
「いいえ、あなたのその人の好さ。それをあいつは、ちゃんと見抜いて、私までを誑らかそうとしてるんです。女の口からは、つい言えもしない言い難さから、今まで黙っていたのは、私も良くはありません。けれどそれは、かんにんして下さるでしょ。もう言ってしまいますから」
「何をおまえにしたというのか」
「はじめのうちは、うるさく艶書なぞをそっとよこしていましたけれど、しまいには図ウ図しくなって」
「えっ、艶書を」
「それどころじゃあないんですよ。あなたが非番の夜だというと、裏庭から忍んで来てさ」
「ここへか」
「いちどなぞは、私を手ごめにしようとさえしたので、私も覚悟したほどです。見てください、そこの化粧台の抽斗を。いつも魔除けの短刀を入れておくんです。つい、こないだの晩だって、私は刃を抜いて見せてやりました。乱暴するなら自分の手で死んでやるって。そしたら良人が仇を取ってくれるだろうといったら、こそこそ消えて行きましたけれど……」