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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
執念ぶかく魯達の大腰にしがみついて離れない。
「ええい街のダニめ。よくも憐れな歌唱いの父娘を、骨の髄までしゃぶりやがったな。この味はその利息だ」
振りほどいて突き上げた鉄拳は、鄭の顎を砕いたとみえ、仰向けにぶったおれた顔は血を噴いて、完全に伸びてしまったようすである。
「ざまア見さらせ」と、魯達はなおも彼の胸いたを踏ンづけて見得を切ったが、鄭の反抗はそれきりだった。ひょいと見ると、片眼は眼窩から流れ出し、歯は舌を噛んでいる。「……しまった、こいつはいけねえ、死んじまった」
魯達は、ちょっと後悔の色を見せた。そしてすぐ見物の群れを割って去りかけたが、一顧するや、わざと後ろへこんな捨て言葉を抛った。
「ち。口ほどもねえ空つかいめ。くたばった振りなどしやがって」
――状元橋を渡るやいな、彼の歩速はだんだん早くなっていた。「つい、大変なことをしてしまった。人民の安寧を守る提轄が、人民を撲り殺した。こいつは、ただですむはずはない」と、心中の自責に追ッかけられている風だ。
彼は、自分の下宿へ帰るやいな、そそくさと持ち物や小費銀をふところにし、その月の下宿代だけを部屋に残して、ぷいとどこへやら飛びだした。