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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

と、李応は花箋紙を取って再度、前より丁重な手紙を直筆でしたため、さらに印章まで捺して、杜興に持たせた。

杜興は馬に乗って、山腹の祝氏の本拠、独龍岡ノ館へいそいで行った。あとでは、浮かぬ顔いろながら、李応はまた、酒茶をかえて、二人を相手に、四方山ばなしをつないでいたが、しかしそれも、

「遅いのう。どうしたことか」

と、やがてはまた、一抹の不安と、時たつほど、重たい焦慮になっていた。

すると。あわただしく、召使の一人がここへまろび込んで来た。――杜興が馬を飛ばして帰って来たというのである。李応がすぐ、

「二人でか?」

と、訊くと、

「いえ一人で」

と、顫えていう。

「さては」

と一同、座を立って、中門まで行ってみると、なるほど、袋叩きにでもなって戻って来たのか、杜興は、紫いろに顔を腫らし、歯ぐきからも血をたらして、悄然と、馬のそばで、衣服の泥を払っていた。

窮鳥、梁山泊に入って、果然、ついに泊軍の動きとなる事

独龍山は、梁山泊を去ること、さして遠い地方ではない。

自然、対峙のかたちだった。

しかも梁山泊の勢いは、日に日に旺となりつつある。疑心暗鬼、つねに祝家荘一円が、彼から蚕食されはしまいかと、厳に警戒しあっていた。