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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「いざッてえ時の要心に備えてあるのさ。だがの棗屋さんよ。おまえにだけはそっと耳打ちしてあげる。――なんでもいいから、道の曲がり角へ来たら白楊樹(ポプラ)を目あてにお曲がり。白楊のない方へうッかり行くと、行けども行けども同じ藪か、ふくろ路次。どうかすると落し穴だの、針金の茨だの、猪罠なども仕掛けてあるぞ」
こう聞かされていた時だった。とつぜん往来をガヤガヤと人騒めきが流れてゆく。「密偵だ、いぬだ」「梁山泊の密偵が一匹捕まッた」という喚きなのである。
石秀はぎょっとした。さては楊林が捕まったか。「さあ、どうしよう?」彼は老人とともに表へ出てみた。そして民団の槍や棒の中に、裸にされた縄目の楊林が追ッ立てられてゆくのを見ても、さて、どうにも手出しは出来ずにしまった。
ところへまたも、一群の正規兵が、隊伍粛々と、目の前を通りすぎた。総つきの立て槍を持った騎馬隊と鉄弓組の中間には、雪白の馬に跨がった眉目するどい一壮士の姿が見えた。老人は敬礼で見送っていたが、あとで石秀にこういっていた。
「ごらんなすッたろ。いま行ったのが祝朝奉さまのご三男、祝彪さまだよ。そして扈家荘のお一人娘、一丈青という女将軍とは、お許娘になっている。