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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「来たな」と、でも直覚したのか、魯達が裏屋根へ躍りでようとしたので、金老爺はあわててその腰帯をつかまえた。
「魯達さま、お待ちください。外へ来たのは、翠蓮がお世話になっている趙家のお主でございます。趙の長者も、かねがね娘の話を聞いて、いたくあなたさまの義侠に感じておいでだったのに、なにか勘違いでもなすったに違いございません。ま、ちょっとこの老爺がわけをお告げしてまいりますから」
あたふたと、金は階下へ馳け下りていった。ほどなく、事は氷解したものとみえ、若者たちは追い返され、趙の長者一名だけが、老爺に伴われて上がってきた。
「はははは。どうも変な気を廻して、とんだご無礼におよぶところでした。わしが翠蓮を世話しておる趙という者ですが、そこもとがかねて聞きおよぶ魯達どのか」
「いや、お互い危ないところだった。いかにもわが輩が提轄くずれの魯達です。どうもお留守ちゅうにうかがって」
「なんのなんの。事、さように分ったらこれも一つの奇縁。翠蓮、こよいはお前の恩人を交じえて大いに楽しく飲もう。酒肴もすっかり新たにかえるがいい」
長者の風というか、趙は五十年配だが頗る大容な人柄に見える。