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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

でも、隙をみせれば斬られるから必死は必死におめきかかって、丁々閃々、ひたいに汗をかいて、幾十合と接戦のおめきはあげつづけているものの、ともすれば、ああ美しい女だ! とつい思い、刃がねの火花にも、何か、べつな精気をふと漏らしてしまいそうだった。同時に、一丈青もそこは女の直感で、

「ま、なんていう敵だろう。ふざけた男よ」

と、いちばい、憎さも憎しと柳眉を立てて、綾なす二刀の秘術をきわめ、魔術とも見えるその迅い光の輪のうちに、発止と、相手の槍を見事、巻き取ッて搦め落していた。

「――あッ、しまった」

鞍の上から矮虎が思わず身を泳がせる。すかさず、一丈青の一刀が、片手なぐりに肩をなぐった。カンと金属的な音がそれにこたえたのをみれば、幸いにも、鎧の金具が、矮虎の一命を救っていたものとはみえる。だが、よほどな衝撃だったのだろう。そのまま矮虎の体は鞍からもんどり打っていた。

「だれか。はやくこの敵を、搦めておしまい!」

一丈青の涼しげな声だった。そう後ろの味方へいうとすぐ、彼女の二刀はもう次の敵を迎えている。矮虎危うしとみて、救いに出て来た欧鵬だった。

だが、間に合わず、矮虎はたちまち、城兵方の縄目にかかり、どっと敵に気勢をあげさせている。