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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「すでに一命のないところを、こうして助けていただきながら、なお勝手な妄執を吐ざくようですが、毛家のおやじと、せがれの毛仲義、あいつら親子を思い出すと、どうでも腹がおさまりません。てまえどもはあとから山東へ追っつきますから、どうぞ皆さんは一ト足先へ落ちてください」
「いや、解の兄弟。おまえたちがこのまま立ち退けぬというのは無理もねえ。この孫立も一しょに毛家へ乗り込んでやろうぜ」
すると、鄒の二龍も、
「あそこは登雲山の麓村。いわばおれたちの古巣に近い。おれたちも行ってやる」
と、途中で馬を向け変えた。
こんな一隊に寄り道されては堪ッたものではない。その晩の毛家の惨状は目もあてられなかった。毛の大旦那も伜の仲義もずたずたに斬りさいなまれ、あげくに家屋敷はあッというまに焼き払われた。荘丁雇人も多かったが身を挺して殉じるほどな者もない。だから蓄えの金銀も鄒の叔父甥が「残して行くのも、もったいない」と、馬の背に付け放題な始末であった。そして炎の空をあとに、一行は道四、五十里を急ぎに急ぎ、やがて先の仲間に追いついた。
かくて、日ならず道は山東に入り、やがて行きついたのは、梁山泊を彼方に見る江岸の一酒店。