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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

ご子息がたへ、紹介する」

そのあいさつ、儀礼もあって、当夜の晩餐には、めずらしく当主祝朝奉までが席に姿を現わした。

終始、弾んでいた欒廷玉は。

「大殿。これです。昼、お耳に達しておきました旧友の病尉遅孫立というのは」

「孫立です。初めて御意を拝しまする」

「やあ、あんたか。こんど総司令部の命で、近くの州へ移駐して来られたと聞くが」

「さようです。何かと以後は、ご教導のほどを」

「とんでもない。当家こそ、ご支配の区域になる。よろしくおちかづきを願わねばならん。そして、そちらのお方は?」

楽和は、とたんに、まごついたが、すぐ孫立が仲をとって言った。

「これは州の役署の方で」

つづいて鄒淵、鄒潤、孫新、解の兄弟らをさしては、

「いずれも、登州の軍人でして、てまえには腹心の部下どもです」

と、機転をはたらかせたものである。このあざやかな紹介に疑いを抱いたものは誰ひとりもなかったらしい。

祝朝奉といい、三傑の息子といい、決して凡庸な人物ではなかったが、孫立一行のうちに、孫の妻と、おばさんのいたこととが、なんといっても、女づれと視る油断の一因を醸していたのは争えない。そして行李を積んだ馬やら馬車やら、どう見たって、これは赴任軍人の引っ越しだった。