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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

かくと聞くや、祝龍、祝虎、祝彪の三兄弟とも、

「小癪な」

とばかり癇癪に駆られ、吊り橋を下ろさせて、突風のごとく、荘門から討ッて出た。

敵がたには、

「豹子頭の林冲!」

と名のる一将がいた。

祝龍、祝虎はそれへむかって、おめいていたが、豹子頭の影は、まるで乱軍の間に明滅する陽炎のごときもので、追い疲れ、戦い疲れ、兄弟がハッと思ったときは、

「あっ、こいつはいかん」

と、余りに城を離れた深入りに気づき、ついに駒を返したことだった。

三男の祝彪もまた、ただ敵の怒濤の中を泳ぎ暴れただけで、宋江の姿も見ず、むなしく郭の内へひきあげていた。――翌日も、また次の日も、変りない襲せつ返しつの膠着万遍といった戦況だった。

すると三日目のこと。大陸的な夕空いちめんまさに灼奕と真っ赤に燃え映えている頃だった。――寄手の後ろの方から車輪陣の象をなした一団が近々と濠ばたへ押し進められてきた。一旗高々と夕風にひらめいているのを見て城内の兵は、

「や、や、あれこそ宋江だ。宋江の本軍が出てきたにちがいないぞ」

と、言い騒いだ。

「ござんなれ宋江。さあ決戦だ」

と、郭門を押ッ開き、吊り橋を下ろし、手に唾して逸りきる祝氏の三傑三兄弟にむかって、このとき、