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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

そこで李応もついに我を折って、一行の中に入って行をともにし、やがて梁山泊の人となった。

といっても、正道の士、撲天李応のことだ。あくまでここは仮の宿と見、毎日の聚議庁における酒宴のもてなしにもついぞ打ち溶けた風もない。――その日もまた彼は、梁山泊一統の統領晁蓋の姿を見たので、

「総統、おねがいです。はや今日で五日目になる。家族らも気がかり。ひとまず、ここを出して、家へ帰して下さらんか」

と、やや哀調をもって嘆願した。

すると晁蓋は、かたわらの宋江、呉用らの顔を見て、意味ありげに笑って諮った。

「どうでしょうご両所。撲天先生には、頻りにああいっていますが」

「はははは。李大人。そのご心配は、すこぶる変なものですな」

「どうしてです。呉学究どの」

「だって、あなたのご家族は、もはや李家荘にはおりませんぜ」

「えっ、いない。ではどこにいますか」

「ここにです」

「こことは」

「もちろん梁山泊。ついさっき、金沙灘の対岸の茶店から報らせがありました。ほどなくやって来るでしょう」

何をいうか、人を愚弄するにもほどがある。――李応はそう取ったものの如く不快な色を閉じてしまった。