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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

叔母はさんざん弄りまわした果てに、気乗りのしない顔をして男の手へ品物を返した。

「また余所へお売りになればったって、決して御損の行く品物じゃありません。」小原は傍に手を突いて覗いているお庄と叔母との顔を七分三分に見比べながら言い立てた。お庄はまた顔に袖を当てて笑い出した。

「いや真実に。」と、その男も笑い出した。そして一順人々の手を経廻って来た時計を、そっと懐へしまいこんだ。

やがてランプの釣り手を掛けかえて、この男と叔母と母親とで、花が始まった。

「あなたもお入りなさいな。」と、お庄も仲間に引き入れられた。お庄は身幅の狭い着物の膝を掻き合わせながら、目にちらちらする花札を手にした。鶴二は後の方で今日の日記を小さい手帳に書きつけていた。

叔父が奥から、のそりと起き出して来たころには、花も大分進んでいた。

叔父はお庄の背後の方に坐り込むと、時計を見あげて懈い欠をしていた。時計はもう九時を過ぎていた。

「そんな手で出るというのがあるものか、お庄は花を知らないかい。」叔父はお庄の肩越しに覗き込んで、煙管を咬えながら一ト勝負後見した。

やがて叔父が褞袍を羽織って、連中の間へ割り込むと、お庄は席をはずれて、酒の燗をしたり、弟と二人で寒い通りへ衆の食べる物を誂えに走ったりした。