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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

七十二

相談ずくで、自分を店の売り物にしようとしているような二人の心持が、ようやく見えて来たようにも思えた。

洋服屋が前に来て騒いだ時も、お庄は着物など着替えさせられて、座敷へ出された。その男は酒に酔うと浮かれて唄など謳い出した。そして帰りがけに、衣兜から名刺を取り出して、お庄にくれた。名刺には高等洋服店何某と記してあった。

洋服屋は、今日もお袋にちやほやされて、養女のお庄を相手に騒いでいた。お庄は銚子を持って母屋の方へ来たきり、しばらく顔出しをしずにいると、また呼び立てられて、離房の方へ出て行った。

「お客さまの前へはあまり出さないことにしておりますものですから……。」と、お袋はお愛想を言いながら、入れ替りに部屋を出た。

七十二

暮れてから客が引き揚げて行くと、家が急に淋しくなった。お庄も強いられた酒の酔いがさめかかって来た。取り散らかった座敷を片着けている女中を手伝いがてら、二階へ上って手擦りに凭りかかっていると、裏の田圃で啼き立てている蛙の声が耳について、頭脳が掻き乱されるようであった。いつもそのころになると、お庄は東京を憶い出していた。

ここへ来る少し前に、茨城の方から叔父のところへ長い手紙をよこしたお照のことなどが、思い浮べられた。