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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
十四
笹村は冷たい濡れ手拭でどきどきする心臓を冷やしていた。
十四
四ツ谷の親類に預けてあった蒲団や鏡台のようなものを、お銀が腕車に積んで持ち込んで来たのは、もう袷に羽織を着るころであった。町にはそっちこっちに、安普請の貸家が立ち並んで、俄仕立ての蕎麦屋や天麩羅屋なども出来ていた。
お銀は萌黄の大きな風呂敷包みを夜六畳の方へ持ち込むと、四ツ谷で聞いて来たといって、先に縁づいていた家の、その後の紛擾などを話して蒼くなっていた。お銀が逃げて来てからも、始終跡を追っかけまわしていたそこの子息が、このごろ刀でとかく折合いの悪い継母を斬りつけたとかいう話であった。
その話には笹村も驚きの耳を聳てた。
「係り合いにでもなるといけないから、うっかりここへ来ちゃいけないなんてね、お蝶さんに私逐ん出されるようにして来たんですよ。」
「へえ。」と、笹村は呆れた目をして女の顔を眺めていた。
「私おっかないから、もう外へも出ないでおこう。この間暗い晩に菊坂で摺れ違ったのは、たしかに栄ですよ。」
傍で母親は、包みのなかから、お銀の不断着などを取り出して見ていた。外はざあざあ雨が降って、家のなかもじめじめしていた。