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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

五

氷屋をするくらいならば……とも思った。

五

「田舎ッぺ、宝ッぺ、明神さまの宝ッぺ。」と、よく近所の子供連に囃されていたお庄の田舎訛りが大分除れかかるころになっても、父親の職業はまだ決まらなかった。

父親は思案にあぐねて来ると、道楽をしていた時分拵えた、印伝の煙草入れを角帯の腰にさして、のそのそと路次を出て行った。行く先は大抵決まっていた。下宿屋の主婦にがみがみ言われるのが厭なので、このごろはその前を多くは素通りにすることにしていた。そして蠣殻町の方へ入り込んでいる。村で同姓の知合いを、神田の鍛冶町に訪ねるか、石川島の会社の方へ出ている妻の弟を築地の家に訪ねるかした。時とすると横浜で商館の方へ勤めている自分の弟を訪ねることもあった。浜からはよく強い洋酒などを貰って来て、黄金色したその酒を小さい杯に注ぎながら、日に透して見てはうまそうになめていた。

「浜の弟も、酒で鼻が真紅になってら。こんらの酒じゃ、もう利かねえというこんだ。金にしてよっぽど飲むらあ。」

「あの衆らの飲むのは、器量があって飲むだでいい。身上もよっぽど出来たろうに。」

「何が出来るもんだ。それでも娘は二人とも大きくなった。