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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

二十五

と、軽く頷いた。

笹村は黙ってうつむいてしまった。

二、三人の人が寄って来ると、先生はいつまでも話に耽った。

「お前はこのごろ何を食っている。」

先生は思い出したように訊ねた。

「そうでござんすな。格別これというものもありませんですからな。私ア塩辛ばかりなめていますんです。」

O氏は揶揄うように言った。

「笹村は野菜は好きか。」

「慈姑ならうまいと思います。」

「そうさな、慈姑はちとうますぎる。」先生は呟いた。

笹村は持って行った金の問題を言い出す折がなくてそのまま引き退った。

二十五

出産の時期が迫って来ると、笹村は何となく気になって時々家へ帰って見た。しばらく脚気の気味で、足に水気をもっていたお銀は、気懈そうに台所の框に腰かけて、裾を捲って裏から来る涼風に当ったり、低い窓の腰に体を持たせたりして、おそろしい初産の日の来るのを考えていた。興奮したような顔が小さく見えて、水々した落着きのない目の底に、一種の光があった。

笹村はいくら努力しても、尨大なその原稿のまだ手を入れない部分の少しも減って行かないのを見ると、筆を持つ腕が思わず渋った。下宿の窓のすぐ下には、黝い青木の葉が、埃を被って重なり合っていた。