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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

「ちょいと勘定なんですがね。」と、お庄は立ち停って、芳太郎に声かけた。

帳場へ上って来た芳太郎の目には不安の色があった。

「お前にあんな親戚があるなんて、何だかおかしいじゃないか。」と、芳太郎は書付けを書きはじめながら詰った。

「私にだって親類がありますよ。」と、お庄は顔を赧めながら言った。

「それじゃお前の何に当る人だ。」

お庄はへどもどして、もう口が利けなかった。目にも涙が出た。

「お前の親類が、座敷へあがって酒を飲むなんて、変じゃないか。」

「え、だから皆さんにもお目にかかるって、そう言ったんですけれど、阿母さんは加減がわるいし、あなただって、今まで寝んでいらしったじゃありませんか。またそれほど近しい親類でもないんですもの。あの人が思いがけなくここを通って、ちょっと寄ったまでなんです。」

「うまく言ってら。四ツ谷へ行って聞いて見るからいいや。」

「え、いいんですとも。私そんな嘘なぞ吐きゃしませんよ。」

しばらく言い合ったが、お庄は秘し逐せないような気がした。そして袂で顔ににじみ出る汗を拭きながら、黙って裏口の方へ出て行った。

女中に呼びに来られて出て行った時分には、磯野は書付けを前に置いて、座敷にぼんやりしていた。